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賃貸管理blog賃貸マンションの空室が埋まらない原因10選と特定・分析方法

なぜあなたのマンションだけ空室が続く?対策前の「原因特定」の重要性

「物件の募集を出しているのに、電話一本も鳴らない」「内見は入るのに、なぜか契約に辿り着かない」―。

空室が続くと、不安や焦燥感に駆られますよね。特に、初めて賃貸経営に携わる方や、先代から大切な資産を引き継いだ二代目オーナー様にとって、「このままでいいのか」という漠然とした不安は尽きないはずです。

多くの方が、空室を埋めるために「すぐにできる対策」に飛びつきがちです。例えば、「家賃を下げてみよう」「壁紙を派手なものに変えてみよう」といった行動です。しかし、根本的な原因が分からぬまま、手当たり次第に打つ対策は、時間と費用の無駄遣いに終わることが少なくありません。

もしあなたの物件が空室続きならば、その原因は、目に見える老朽化だけではないかもしれません。対策の失敗の9割は、「真の原因の特定」を疎かにしていることにあります。外科医が患部を特定せず開腹手術をしないのと同じように、オーナー様もまず愛着ある物件の「病巣」を見つけ出すことから始めるべきなのです。

本コラムでは、空室の根本原因を「外部要因」と「内部要因」の2軸で徹底的に分析し、あなたの物件の真の問題点を明確にします。記事の最後には、誰もが客観的に診断できる「自己診断チェックリスト」を用意しました。ぜひ、この分析を通じて、賃貸経営を安定させるための確かな一歩を踏み出しましょう。

【外部要因】市場と立地環境に潜む空室の「構造的な原因」

オーナー様自身の努力だけでは変えることが難しいものの、賃貸経営の成否を大きく左右する広域的な視点での原因です。これらは「構造的な問題」として受け止め、自身の物件が市場のどこに位置しているかを客観的に見極める必要があります。

エリア全体の賃貸需要の低下(人口減少、企業撤退など)

あなたの物件がどんなに魅力的でも、「住みたい」と思う人がそのエリアにいなければ、空室は埋まりません。地域社会の構造変化は、賃貸経営にとって最も避けられないリスクの一つです。

昨今、地方都市や郊外では、人口減少や主要な企業・工場の撤退、大学の移転などにより、賃貸物件を求める「パイ(需要)」そのものが縮小しています。「以前はすぐに決まったのに」という物件でも、時代の流れとともに、そのエリアの価値が変化している可能性があるのです。まずは、自治体の統計データや地域のニュースを確認し、「そもそもこのエリアに賃貸需要が残っているか」という前提を再確認することが、対策の第一歩となります。

供給過多による競合物件との差別化不足(新築マンションの増加など)

あなたの物件の周囲に、新築マンションや大規模な集合住宅が次々と建設されていませんか?これは、築年数の古い物件にとっては最大の脅威です。

入居希望者は、当然ながら「より新しい、より設備が充実した物件」を選びます。築浅物件は、「オートロック」「宅配ボックス」「無料インターネット」といった現代の必須設備を完備しており、内見の段階で、どうしても築古物件は見劣りしてしまいます。

ここで大切なのは、「競合を知る」ことです。ライバル物件の「強み」を分析することで、「うちの物件の弱み」が明確になります。ライバル物件と同じ土俵で戦うのではなく、「価格」「広さ」「立地」など、どこか一つで優位に立てる「ニッチな強み」を探すことが重要です。

相場変動と家賃設定のミスマッチ(周辺相場より高すぎる/安すぎる)

インターネットで物件を探す時代、入居希望者は、わずか数分の操作で周辺物件の家賃を比較検討できます。あなたの物件の家賃が周辺の類似物件(築年数、間取り、設備が近いもの)よりも高い場合、その物件は検索結果で無視され、内見のチャンスすら生まれません

逆説的ですが、相場よりも極端に安すぎる家賃設定も危険です。入居者から「何か問題がある物件なのでは?」と質を疑われたり、当然ながら賃貸経営としての収益性を損なったりします。地域の不動産会社に相談し、「過去3ヶ月で実際に成約した類似物件の賃料データ」を基に、適正家賃を再設定する。単なる「募集賃料」ではなく、「決まる賃料」を知り、冷静に判断する勇気を持ちましょう。

【内部要因】物件と管理体制に問題がある空室の「固有原因」

オーナー様自身が改善、投資、工夫をすることで解決できる、ミクロで具体的な原因です。ここが、空室対策で最も費用対効果が出やすい領域とも言えます。

物件の魅力・スペックに関する原因

1 築年数に伴う設備・内装の老朽化とデザインの陳腐化

築15年、20年という節目を越えると、水回りの古さは特に目立ちます。キッチン、浴室、洗面台のくすみは、内見者に「清潔感の欠如」という印象を与え、契約を遠ざける原因となります。また、「和室が多い」「畳の部屋しかない」といった間取りや内装のデザインは、現代のライフスタイルに合わない「陳腐化」の典型です。

もちろん、全てを最新設備に交換するのは費用がかかりすぎます。しかし、「入居者が毎日使う場所」を厳選し、費用対効果の高い改修を行うべきです。例えば、温水洗浄便座、TVモニターホン、そして最新の照明器具への交換だけでも、内見時の印象は劇的に改善します。

2 不人気な間取り、または時代に合わない設備仕様(ネット非対応など)

「リビング」のない昔ながらの「DK(ダイニングキッチン)」は、今の単身者やカップルには敬遠されがちです。また、現代の「必須設備」として、「無料インターネット完備」は外せません。スマートフォンの普及やリモートワークの増加により、高速なネット環境は生活インフラそのもの。これが未導入の物件は、他のスペックが良くても選ばれない時代になっています。

外部要因の分析で競合がネット無料化を導入しているなら、迷わず投資すべきです。これは空室期間が長引くことによる逸失利益を考えれば、最も優先すべき対策の一つと言えるでしょう。

3 外観・共用部の手入れ不足による「第一印象」の悪さ

内見者は、エントランスに入った瞬間、いや、物件に近づいた瞬間から「ここに住む自分」をイメージします。エントランスの蜘蛛の巣、ポスト周りのビラやゴミ、駐輪場の乱雑さ、廊下の照明の球切れ…。これらはすべて、「この物件は管理がずさんだ」「誰も住人に気を配っていない」というネガティブなメッセージとして伝わります。

管理会社任せにするだけでなく、オーナー自身が月に一度、「内見者目線で物件をチェック」する日を設け、写真に撮って記録しましょう。第一印象の悪さによる機会損失は、非常にもったいないものです。

募集・管理体制に関する原因

4 入居条件が厳しすぎることによる機会損失(ペット不可、保証会社不可など)

「ペット不可」「高齢者不可」「外国籍の方不可」といった厳しい入居条件は、入居者候補の母集団を大幅に減らします。特に「保証会社利用不可」という条件は、現代の賃貸募集においては、入居者にとって大きな壁です。連帯保証人を見つけにくい時代だからこそ、保証会社の利用は入居者の安心材料にもなります。

リスクはありますが、ペット可にすることで家賃を上げられる可能性も生まれます。保証会社や火災保険の加入を必須とするなど、リスクヘッジを行いながら、条件を柔軟に緩和する姿勢も、空室対策には欠かせません。

5 募集図面や写真の質が低く、魅力が伝わらない

どれだけ良い物件でも、インターネットに掲載されている写真が暗かったり、狭く見えたり、物件の特長が全く伝わらない図面では、入居希望者のクリックすら勝ち取れません。彼らは何十、何百という物件情報の中から、クリックする数件を選んでいるのです。

暗い内装写真、古い設備を隠すような写真、広角レンズを使わない狭い写真では、物件の魅力は半減どころかゼロになってしまいます。管理会社に依頼する際は、「プロ並みの写真」を使うことを強く依頼し、場合によってはオーナー様自身が広角レンズを購入し、明るく、物件の良さが伝わる写真を撮影して提供するくらいの熱意が必要です。

6 担当する不動産会社の客付け努力不足または連携不足

「募集を出しているのに決まらない」という時、その責任は物件にあるとは限りません。担当の不動産会社や担当者が、あなたの物件への客付けに熱意を持って取り組んでいない可能性があります。他の「決まりやすい物件」ばかりを優先的に紹介し、あなたの物件は二の次になっているかもしれません。

定期的に担当者と面談し、「現在の客付け状況」「内見者の反応」などを具体的にヒアリングしましょう。そして、「より効果的な募集方法がないか」「他社にも情報公開を徹底しているか」を確認し、オーナーとして二人三脚で対策を講じる体制を築くことが、スムーズな客付けへの鍵となります。

あなたの物件の課題は?空室原因を特定するための「自己診断チェックリスト」

特定した原因を、「感覚」ではなく「事実」で捉えるため、次のチェックリストを参考に、冷静に現状を自己診断してみましょう。

【チェックリスト】物件オーナー向け原因特定シート

チェック項目

診断結果
(Yes / No)

対策の方向性

【外部-価格】
類似物件の成約賃料は、現在の募集賃料より5%以上低い

Yes / No 家賃の見直し、または付加価値の追加
【外部-立地】
エリアの人口が過去5年で減少傾向にある、または主要施設が撤退した
Yes / No ターゲットの変更(例:法人契約、ニッチ層)
【内部-設備】
築15年以上で、無料インターネット / 独立洗面台 / TVモニターホンのうち2つ以上が未導入である
Yes / No 設備投資を最優先で実施
【内部-印象】
共用部の照明に球切れがある、または駐輪場・ゴミ置き場が乱雑である
Yes / No 管理体制の改善、清掃頻度の見直し
【内部-募集】
インターネット募集写真に、暗い写真、狭い写真が使われている
Yes / No 写真の撮り直し、プロへの依頼
【内部-条件】
ペット不可、保証会社不可など、入居条件を厳しく設定している
Yes / No リスクヘッジの上、条件の柔軟な緩和を検討
【内部-仲介】
内見者からの具体的なフィードバックを過去1ヶ月で得られていない
Yes / No 管理会社との連携強化、報告義務の徹底

原因の特定・分析を成功させるための具体的なステップ

1 内見者のフィードバック収集を徹底する

管理会社に「家賃がネック?」「設備がネック?」「内装デザインがネック?」など、具体的な質問リストを作成し、内見者にアンケートを取るよう依頼しましょう。生の声こそが、あなたの物件の真の弱点です。

2 競合物件の「内見」を敢行する

 地域の賃貸仲介業者に一般客を装って連絡し、自分の物件と競合する「先に決まった物件」を内見してみるべきです。ライバルがどんな「勝ち筋」で入居者を獲得したかを知ることで、自物件の対策に活かせます。

3 募集期間と内見数を冷静に分析する

「募集開始後、3ヶ月以上空室」かつ「内見者数:ゼロ」なら、家賃や募集情報(写真・図面)が原因です。

「内見者数:多い」のに「契約数:ゼロ」なら、物件自体の魅力(内装、設備、共用部の印象)が原因と絞り込むことができます。

原因特定後に取るべき次のアクション(具体的な対策の導入準備)

原因特定は、効果的な対策を打つための重要なスタートラインです。次に取るべき行動は、特定された課題によって異なります。

特定した原因ごとの対策の方向性

●外部要因が主要因の場合
努力で変えられない市場の状況が主要因であれば、家賃を下げるか、またはエリアで希少性の高い「ニッチなターゲット」(例:法人契約特化、学生向け家具家電付き)へ切り替えるなど、根本的な戦略の見直しが必要です。

●内部要因が主要因の場合
設備投資やリフォーム、管理体制の改善など、費用対効果の高いアクションを優先的に行いましょう。特に、チェックリストで「Yes」が多かった項目から、予算と相談して優先順位をつけることが肝心です。

対策の優先順位と予算配分の考え方

まずは、費用対効果が高く、すぐ効果が出る対策を最優先で実施しましょう。具体的には、募集写真の撮り直し(低コスト)、無料インターネットの導入(中コストで効果大)などです。次に、内見者のフィードバックで最も不満が多かった「水回り設備の改修」「TVモニターホンの設置」など、契約率を高めるための投資に移ります。

賃貸経営はPDCAサイクルです。原因を特定し、対策を打つプロセスを繰り返せば、必ず空室リスクは低減します。この分析を通じて、あなたの賃貸経営はより盤石で安定した収益を生む資産へと変わっていくでしょう。ぜひ、今日から自己診断を始めてみてください。

空室対策は「原因分析9割、行動1割」

空室が埋まらないのは、あなたの物件が悪いのではなく、市場や競合とのミスマッチ、あるいは対策を打つべきポイントがずれているだけかもしれません。

闇雲なリフォームや家賃調整ではなく、まずは「外部環境(市場)」と「内部環境(物件)」を冷静に自己診断することが成功への第一歩です。自己診断チェックリストを使い、あなたの物件の真の課題を見つけ出し、効果的な対策を打ちましょう。


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